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札幌地方裁判所 平成4年(わ)194号 判決 1992年10月07日

被告人

(一)法人の名称

クライチ株式会社

代表者氏名

土門一宏

本店所在地

札幌市中央区南三条西六丁目一番地二

事件名

法人税法違反

事件番号

平成四年(わ)第一九四号

(二)法人の名称

蔵一不動産株式会社

代表者氏名

土門一宏

本店所在地

札幌市南区澄川四条一一丁目九番一一号

事件名

法人税法違反

事件番号

平成四年(わ)第一九四号

(三)氏名

土門一宏

生年月日

昭和一七年六月五日

本籍

札幌市南区澄川五条一二丁目三八九番地二五三七

住居

同市南区澄川四条一一丁目九番一一号

職業

会社役員

事件名

法人税法違反

事件番号

平成四年(わ)第一九四号

検察官

吉浦邦彦

弁護人

金谷幸雄

主文

被告人クライチ株式会社を罰金八〇〇万円に、被告人蔵一不動産株式会社を罰金七五〇〇万円に、被告人土門一宏を懲役二年に処する。

被告人土門一宏に対し、この裁判確定の日から四年間刑の執行を猶予する。

理由

(認定事実)

第一  被告人クライチ株式会社(以下「被告会社クライチ」という。)は、札幌市中央区南三条西六丁目一番地二(平成二年八月九日付移転登記前は、同市中央区北一条西七丁目三番地)に本店を置き、不動産の売買、斡旋、仲介等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人土門一宏は、被告会社クライチの代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人土門は、被告会社クライチの業務に関し法人税を免れようと企て、いわゆるダミー会社として新日本開発株式会社(以下「新日本開発」という。昭和六三年一一月一五日変更後の商号は、日東都市開発株式会社)を設立し、被告会社クライチが行った不動産の売買取引を外見上二分し、一部を新日本開発の売上げとして、被告会社クライチの売上げの一部を除外するとともに、新日本開発に架空経費を計上する方法により、所得及び課税土地譲渡利益金額を秘匿したうえ、昭和六三年四月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社クライチの実際所得金額が三六三七万〇〇八二円、課税土地譲渡利益金額が六三四二万四〇〇〇円あったのにかかわらず、平成元年二月二八日、同市中央区大通西一〇丁目所在の所轄札幌中税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が二四万六八三一円、課税土地譲渡金額が零円でこれに対する法人税額が七万一六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同日を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社クライチの右事業年度における正規の法人税額三三五七万四九〇〇円と右申告税額との差額三三五〇万三三〇〇円を免れた。

第二  被告人蔵一不動産株式会社(以下「被告会社蔵一」という。)は、同市南区澄川四条一一丁目九番一一号(平成二年八月九日付移転登記前は、同市中央区北一条西七丁目三番地)に本店に置き、不動産の売買、斡旋、仲介等を目的とする資本金二〇〇〇万円の株式会社であり、被告人土門一宏は、被告会社蔵一の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人土門は、被告会社蔵一の業務に関し法人税を免れようと企て、被告会社蔵一が行った不動産売買の取引で、前記日東都市開発株式会社(以下「日東都市開発」という。)を売主と仮装し、被告会社蔵一の売上げを除外するとともに、日東都市開発に架空経費を計上する方法により、所得及び課税土地譲渡利益金額を秘匿したうえ、昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日までの事業年度における被告会社蔵一の実際所得金額が二億九六七七万八五六二円、課税土地譲渡利益金額が五億六一七八万八〇〇〇円あったのにかかわらず、平成二年二月二八日、前記札幌中税務署において、同税務署長に対し、その所得金額及び課税土地譲渡利益金額がいずれも零円でこれに対する法人税額が零円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限である同日を徒過させ、もって、不正の行為により被告会社蔵一の右事業年度における正規の法人税額二億九二二一万五六〇〇円と右申告税額との差額二億九二二一万五六〇〇円を免れた。

(証拠)

注・挙示した証拠に付した番号(例「乙一」「甲五三」)は検察官証拠等関係カードの請求番号(「乙一号証」「甲五三号証」)を示す。

全部の事実

一  各被告会社社長取締役兼被告人土門の公判供述

一  被告人土門の検察官調書(乙一・二)

一  和田哲哉(甲五三)、和嶋信彦(甲五四)、富山國彦(甲五五)、吉岡吉次(甲五六)、末廣京子(甲五八)の検察官調書

一  末廣京子(甲五七)、知野福一郎(甲五九)、村上清(甲七一)の大蔵事務官てん末書

一  登記簿謄本(乙五)

第一の事実

一  桜口進(甲六〇)、佐藤忠男(甲六一)、坪田政博(甲六二)、渡辺勝義(甲六六)の検察官調書

一  尾崎八十治(甲六三)、石川律子(甲六四)、植田幸子(甲六五)の大蔵事務官てん末書

一  脱税額計算書(甲五)、売上高調査書(甲七)、建物原価調査書(甲八)、給料手当調査書(甲九)、通信費調査書(甲一〇)、交際費調査書(甲一一)、保険料調査書(甲一二)、登記料調査書(甲一三)、支払手数料調査書(甲一四)、雑費調査書(甲一五)、交際費の損金不算入額調査書(甲一六)、欠損金の当期控除額調査書(甲一七)、調査事績報告書(甲五一)

一  登記簿謄本(乙三)

一  領置てん末書(甲一)

一  法人税決議書綴一綴(平成四年押第一〇一号の一)

第二の事実

一  宮達圭策(甲六七)、谷守雄(甲六八)、名越良一(甲六九)、村谷俊治(甲七〇)の検察官調書

一  脱税額計算書(甲六)、売上高調査書(甲一八)、不動産収入調査書(甲一九)、不動産仕入高調査書(甲二〇)、給料手当調査書(甲二一)、福利厚生費調査書(甲二二)、旅費交通費調査書(甲二三)、通信費調査書(甲二四)、交際費調査書(甲二五)、保険料調査書(甲二六)、修繕費調査書(甲二七)、水道光熱費調査書(甲二八)、租税公課調査書(甲二九)、登記諸掛調査書(甲三〇)、事務用品費調査書(甲三一)、広告宣伝費調査書(甲三二)、支払手数料調査書(甲三三)、諸会費調査書(甲三四)、新聞図書費調査書(甲三五)、賃借料調査書(甲三六)、消耗品費調査書(甲三七)、車両費調査書(甲三八)、調査研究費調査書(甲三九)、ビル管理公益費調査書(甲四〇)、寄付金調査書(甲四一)、雑費調査書(甲四二)、受取利息調査書(甲四三)、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書(甲四四)、損金の額に算入した附帯税等調査書(甲四五)、交際費の損金不算入額調査書(甲四六)、欠損金の当期控除額調査書(甲四七)、調査事績報告書(甲五二)

一  登記簿謄本(乙四)

一  領置てん末書(甲三)

一  法人税決議書綴一綴(前記押号の二)

(適用法条)

一  被告会社クライチ

第一の犯行 法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項

主刑 罰金八〇〇万円

二  被告会社蔵一

第二の犯行 法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項

主刑 罰金七五〇〇万円

三  被告人土門一宏

第一及び第二の各犯行 各法人税法一五九条一項

刑種の選択 各懲役刑

併合罪の加重 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い第二の罪の刑に法定の加重)

主刑 懲役二年

刑の執行猶予 刑法二五条一項(四年間猶予。左記のような被告人に有利不利な一切の情情を総合考慮)

不利な事情-ほ脱額が合計三億二五七一万円余と高額であり、ほ脱率も約九九パーセント(被告会社クライチ)から一〇〇パーセント(被告会社蔵一)と高率であること、ダミー会社を設立、利用するなど計画的な犯行であり、犯行の手口も巧妙かつ悪質であること、動機も裏金としての事業資金を蓄えようとしたもので、自己中心的であること等

有利な事情-反省悔悟、修正申告、本税、重加算税の納税計画が了承され、平成四年九月分までは実行済みであり、今後も計画に従った納税が見込まれること、罰金以外の前科がないこと、その他被告人の経歴、健康状態、家族状況等

(裁判長裁判官 佐藤學 裁判官 宮崎英一 裁判官 栗原正史)

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